「接地極を打ち込んだのに、抵抗値が全然下がらない…」
新人の頃、私はこれで何度も穴を掘り直しました。
夏の現場で土が乾燥しきっていて、規定値の100Ω以下がどうしても出ない。接地極を深く打ち直し、場所を変え、水をまいて…それでもなかなか下がらない。あのときの「なぜ下がらないんだ」という焦りは今でも覚えています。
接地工事は「穴掘って棒を打ち込むだけ」と思われがちですが、実際には内線規程に基づいた正しい知識と現場の経験が必要な作業です。
この記事では接地工事の種別・抵抗値・測定方法を現場目線で解説します。
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接地工事とは何か
接地工事(アース工事)とは、電気機器の金属部分と大地を電気的につなぐ工事です。
目的は主に2つです。
①感電防止 機器の絶縁が破壊されたとき、漏れた電流を大地に逃がして人体への電流を最小限にします。
②機器保護 雷サージや異常電圧が発生したとき、大地に電流を逃がして機器を保護します。
接地工事の種別と抵抗値
内線規程では接地工事をA・B・C・D種の4種類に分類しています。
| 種別 | 接地抵抗値 | 主な用途 |
|---|---|---|
| A種 | 10Ω以下 | 高圧・特別高圧機器の外箱 |
| B種 | 150÷地絡電流以下 | 変圧器の低圧側 |
| C種 | 10Ω以下 | 300Vを超える低圧機器の外箱 |
| D種 | 100Ω以下 | 300V以下の低圧機器の外箱 |
現場で最もよく施工するのはD種接地です。エアコン・洗濯機・冷蔵庫などの金属製外箱に施します。
D種接地の緩和条件
0.5秒以内に動作する漏電遮断器を設置した場合、D種接地の接地抵抗は500Ω以下に緩和されます。
この緩和条件は重要です。現場では漏電遮断器と組み合わせることで、接地抵抗値の目標を500Ω以下に下げられます。
接地線の太さ
接地線の太さも内線規程で定められています。
| 種別 | 最小太さ |
|---|---|
| A種・B種 | 2.6mm以上(直径)または5.5mm²以上 |
| C種・D種 | 1.6mm以上(直径)または2mm²以上 |
現場ではD種接地に緑色の1.6mm単線を使うことがほとんどです。「接地線は緑」と覚えておくと配線時に迷いません。
接地極の種類と施工方法
よく使われる接地極の種類
①亜鉛めっき鋼管(最も一般的) 直径19mm程度の亜鉛めっき鋼管を地中に打ち込みます。コスパが良く施工しやすいため、現場で最もよく使われます。
②銅板 腐食しにくく接地性能が高いですが、鋼管より高コストです。重要設備や接地抵抗値が厳しい場所に使われます。
③基礎接地(コンクリート埋設鉄筋) 建物の基礎に埋め込まれた鉄筋を接地極として利用します。新築工事では標準的な方法になっています。
④水道管(コンクリート包囲のもの) 地中に埋設された金属製水道管は接地極として使用できます。ただしプラスチック管は不可です。また水道メーターの取替え時に樹脂製メーターが使用されると接地の連続性が失われる場合があります。
接地極の埋設深さ
接地極は地表から75cm以上の深さに埋設します。凍結深度より深くすることも必要です。
ギルドマスター・モリの現場メモ
新人の頃、夏の現場で接地抵抗値が全然出なくて本当に困りました。
土が乾燥していると抵抗値が上がります。接地極を打ち込んでアーステスタで測定したら200Ω以上出てしまい、規定値の100Ω以下に全然届かない。
やり直したことは主に3つです。
①接地極をより深く打ち込む 最初は50cmくらいで打ち込んでいましたが、それを75cm以上に深くしました。
②接地極の場所を変える 日当たりの良い乾燥した場所から、日陰の湿った場所に打ち直しました。土の状態で抵抗値は大きく変わります。
③接地極を増設して並列接続する 2本の接地極を並列につなぐと合成抵抗が下がります。ただし完全に半分にはなりません。
最終的に3本打ち込んで何とか規定値をクリアしました。あの経験以来、接地工事は土の状態を先に確認してから場所を決めるようにしています。
接地抵抗の測定方法
接地工事完了後は必ず接地抵抗を測定して規定値以下であることを確認します。
使用する機器
**アーステスタ(接地抵抗計)**を使用します。絶縁抵抗計(メガー)と間違えやすいので注意してください。全く別の機器です。
測定の手順
①補助接地極を準備する アーステスタによる測定には被測定接地極(E)のほかに補助接地極2本(P極・C極)が必要です。
②補助接地極を打ち込む 被測定接地極からP極を約10m、C極を約20m離れた位置に打ち込みます。一直線上に並べるのが基本です。
③リード線を接続する アーステスタのE端子・P端子・C端子に対応するリード線を接続します。
④測定する 測定ボタンを押して値を読み取ります。
⑤補助接地極を抜く 測定後は必ず補助接地極を抜きます。これを忘れると他の作業者が踏んで危険です。
測定時の注意点
- 雨天直後は土が濡れて抵抗値が低く出ることがあります。天候が安定したタイミングで測定する方が信頼性が高いです
- 近くに埋設金属管がある場合は測定値に影響することがあります
- 測定記録は必ず残しておきましょう。後の問い合わせや定期点検のときに役立ちます
接地抵抗値が規定値を超えた場合の対処法
測定の結果、規定値を超えてしまった場合の対処法は主に4つです。
①接地極をより深く打ち込む 深いほど土の水分量が安定していて抵抗が下がります。
②場所を変える 日陰・湿った場所・粘土質の土はに接地抵抗が下がりやすいです。
③接地極を増設して並列接続する 複数の接地極を並列につなぐと合成抵抗が下がります。2本並列で理論値は1/2ですが実際はそれより大きくなります。
④接地補強材を使用する 接地極の周囲に導電性の補強材(硫酸銅水溶液など)を充填して抵抗値を下げる方法もあります。
接地工事を省略できる場合
以下の条件を両方満たす場合、接地工事を省略できます。
- 対地電圧が150V以下
- 乾燥した場所に設置
ただし水気のある場所では省略できません。どちらか一方の条件だけでは省略不可です。
また二重絶縁構造(保護絶縁)の機器は外箱への接地工事を省略できます。電動工具などに採用されており、二重絶縁マーク(□の中に□)が表示されています。
まとめ
接地工事のポイントを整理します。
- D種接地は100Ω以下(ELB設置で500Ω以下に緩和)
- 接地線はD種・C種とも1.6mm以上の緑線
- 埋設深さは75cm以上
- 測定はアーステスタで補助極2本を使って行う
- 抵抗値が出ない場合は深打ち・場所変更・増設で対応
接地工事は地味に見えて、施工の良し悪しが安全に直結する重要な工事です。基準値をクリアするまで妥協せずにやり直す。それが現場での鉄則です。⚡️
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